『くらしのアナキズム』読書会の記録
昨日は久しぶりの読書会でした。
参院選もあり、政治について語るたたき台として『くらしのアナキズム』を選びました。
人類学が明らかにした国家以前の人間の在り方に、人間の本来の在り方であるアナキズムが体現されているという内容です。
アナキズムは国民国家を否定する近代-現代思想の一つと考えられがちですが、その基盤はむしろ人類史の最も深いところにあるということですね。
国民国家の仕組みは、国家なき社会、国民国家成立以前の社会、あるいは国民国家が崩壊したときの社会とは大きく異なるものです。その断絶をつなぐのがアナキズムの思想であり、国民国家の中にいながらアナキズムを考えることは、国民国家が「デフォルト」ではない社会を国民国家の中で実践することになるのだと思います。
一方で、このようなアナキズムのとらえ方は国民国家を否定しないどころか、国民国家の枠内で日々の暮らしをよりよいものにしようという努力を促す思想ともなるかもしれません。日々の家族や職場のコミュニティ、あるいは災害でできた行政の空白の中で「アナキズム」を実践しようという形で、既存の体制と相補的なものとなることができるでしょう。「暮らし」を第一に掲げるアナキズムは保守的で体制維持的なものとなるかもしれない。
国民国家は私たちを完全に支配するのではない、むしろ私たちが私たち自身を「下から」支配していくことで、国民国家は完成するといえます。例えば、国家は感染症対策を制定しますが、それを支えるのは外出を自粛したりマスクをつけたりすることを促す「アナキズム」的な実践でもあるわけです。
もちろん、こうした解釈は著者の主張とは外れていくのですが……いずれにせよ、アナキストの「大物」からたどる教科書的な入門書とは違う、人類学からのアプローチはとても新鮮でした!