ナベノハウス活動記録

熊本コモンハウス「ナベノハウス(鍋乃大厦)」@KNabezanmaiの活動記録です

公害防止管理者 水質有害物質特論のすすめ

福岡アジア美術館で「水俣・福岡展」が開催されます。有機水銀中毒により、今もなお被害を受けた多くの人々が苦しんでいます。

faam.city.fukuoka.lg.jp

 

四大公害病水俣病新潟水俣病イタイイタイ病四日市ぜんそく)に代表される激甚な公害が各地で発生したため、1970年の「公害国会」において広範な公害関連法案が可決されました。それらは現在、1993年に成立した環境基本法のもとに体系化されています。

しかし、工業化がさらに進展している現在、大気や水質環境はどのように維持されているのでしょうか。それを具体的に知る一つの方法が、公害防止管理者という資格を勉強することだと思います。

特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」で指定された工場は公害防止組織を整備し、公害防止統括者等を選任しなければなりません。その公害防止組織で求められる資格が公害防止管理者です。

公害防止管理者試験には大きく大気、水質、の資格がありますが(他にもあります)水俣病に関係するのは水質の「有害物質特論」という科目です。

あなたがチッソの工場監督者だったとします。あなたは触媒に使用した水銀をどのように処理するべきでしょうか。それは、「サーキュレーター」のような非科学的な沈殿槽(のようなもの)を作るのではなく、塩素で水銀についているアルキル基を酸化分解し、水銀イオンに変え、それを中性条件で硫化水素による沈殿によって除去しなければなりません。沈殿した水銀を回収しない場合は、セメント固化やキレート剤添加によって汚泥からの溶出を防ぐ必要があります。

さらに、排水にどの程度水銀が含まれているかを知るために、強酸と酸化剤で水銀化合物を無機水銀まで分解した後、スズで還元した金属水銀を還元気化原子吸光法で測定したり、ガスクロマトグラフ法や薄層クロマトグラフ分離-原子吸光分析法で有機水銀を測定したりする必要があります。

このような方法を考慮せずに、水銀を工業的に使用してはいけないのです。しかし、こうした方法が確立されるまでにどれだけの犠牲が払われたのか、思いを致すことが大切だと、一受験者として思います。

公害防止管理者の水質関係を勉強する

それでは、公害防止管理者の水質関係を勉強するにはどうすればよいでしょうか。なにか一冊手元に置くとすれば、産業環境管理協会の過去問題集です。公式テキスト「新・公害防止の技術と法規」の該当部分が抜き書きされているので、問題を解いて解説を読むことを繰り返すだけでかなり力をつけることができます。これだけ購入して、後はネットで勉強して合格を狙うことも不可能ではないと思います。

これと、公式テキストの「新・公害防止の技術と法規」で勉強するのが正攻法ですが、それだけではわざわざ記事を書く甲斐がないので、全く前提知識のない状態から勉強を始めるにはどうすればいいか、という観点からおすすめの書籍を紹介します。

内容としては基礎の基礎ですが、水質関係で要求される知識の全体像をつかむには最適だと思います。これを図書館で借りて入門するのもいいのではないでしょうか。

産業環境管理協会の出している入門書もあります。こちらは過去問の抜粋もあるので、試験の概要をつかむのに最適です。ただし、試験で問われる知識の半分程度しか網羅されていないので、この本に書いてある知識を完璧にしても合格(6割以上)は難しいです。

試験の概要や、上記の「基礎講座」でほとんど触れられていない公害総論については、最近「かたくらch」さんがよくまとまった動画を投稿されています。法律の勉強の仕方は特に参考になると思います。

www.youtube.com

過去問がよくまとまっているサイトもあります。

yaku-tik.com

なんと10年以上の過去問が簡単な解答・解説付きで掲載されています。このサイトさまを利用して過去問を繰り返し解けば合格圏内にはいると思います。

それから、私はバックグラウンドが化学・生物系なので、法律の勉強に苦戦しました。

公害総論は、知識問題は過去問でだいたいカバーできますが、環境基本法のいくつかの条文は丸暗記が求められるようです。すべてを暗記できるわけがないので、過去問でよく問われる頻出の条文を集中して覚えるのが良いと思います。具体的には、環境基本法の2,4,8,16,20条あたりを覚える必要があると思います。また、他の主要な法律を知っておく必要はありますが、暗記するならまず環境基本法に集中するのがよさそうです。同義語で誤りの選択肢が作られていて、明らかに暗記を要求している問題が多いからです。法規の全体像は「まるごとわかる環境法」がよく整理されていると思ったので、流し読みしました。

勉強のテクニック

勉強のテクニックですが、ネットで情報を収集するとき、サイトの情報を抜き書きする「ノート」を作るとよいと思います。「公害防止管理者試験まとめました」の解説から気になる箇所をコピペし、さらにわからない単語を検索してその説明をコピペし、自分専用の試験ノートを作るとよいのではないでしょうか。いろいろ方法はあると思いますが、私の使ったアプリはEvernoteです。

evernote.com

また、ノートを作るときは、公害総論なら公害総論、水質概論なら水質概論と範囲を決めて、その範囲の過去問をどんどんさかのぼって解きながらまとめていくのがいいでしょう。年度ごとにすべての科目を解く勉強の仕方は、試験直前の実力試しならともかく、知識を整理する目的にはそぐわないです。

有害物質特論に挑む

さて、それでは公害総論、水質概論、汚水処理特論、水質有害物質特論、大規模水質特論で特に難しい科目はどれでしょうか。ずばり、水質有害物質特論だと思います。難しいというのは、過去問を解きすすめるだけでは、効率的に勉強できない要素があると思うからです。

そこでおすすめなのが、高校化学の無機化学の復習です。私はバイトで高校生に化学を教えていたので、沈殿の知識がスムーズに入ってきました。水酸化物や硫化物の沈殿は、図説のきれいなイラストを眺めてみるのもいかがでしょうか。

次におすすめなのが、「これからの環境分析入門」です。もし図書館で見つけたら、機器分析手法を一読するのをお勧めします。機器の名前だけでは原理がよくわかりませんし、ネットで見つけられる情報にも限度があります。

さて、最後に、ネットで見つかる情報には限りがあると言いましたが、google scholerで「わかり易い公害分析・計測基礎講座」を検索してみてください。

1980年ころの古い解説ですが、これが意外と使えます。特に吸光光度法は、なぜ~吸光光度法とつくいろいろな方法があるのか納得できます。原子吸光法との違いも秀逸です。当時の試行錯誤があって今の整備された検定法があることが伝わってきます。

先人が激甚な公害病の被害に苦しみ、その教訓を体系化し、公害防止組織という制度として具体化されていること、それを試験を通して思い起こすのも良いのではないでしょうか。